江戸時代の柚餅子を再現する。
江戸時代、加賀藩前田家のお殿様が召し上がっていた柚餅子を再現する。
そんな夢のようなことを始めたのは、平成二十年の秋の終わりでした。
前田家に仕えた料理人 舟木伝内 とその息子 長左衛門安信 が書き残した膨大な料理書。
そして舟木家の料理人が活躍をした約百年後、幕末に前田家に仕えた料理人 小島為善 。
彼らの書き残した料理書には、何種類もの柚餅子の作り方が記されています。
今回再現のもとになったレシピは、加賀藩十代藩主 前田重教 (しげみち・1741~1786)の御膳方を務め、十一代藩主 治脩 (はるなが・1745~1810)の治世に藩の料理人の第一の地位である御料理頭になった 舟木長左衛門安信 が著した 『庖厨調飪規矩』 と 『料理の栞』 に記載されています。
その中で、柚子の形のままにつくる丸柚餅子は江戸時代の料理書には 『柚厭』 と名付けられています。
この 『柚厭』 の製法
この『柚厭』は、現代の丸柚餅子と異なり、道明寺粉を用います。
道明寺粉は糒(ほしい)のことですが、河内国にある道明寺という寺の付近で近世以来良質の糒が作られたことから、この糒を道明寺もしくは道明寺粉と通称するようになりました。
この道明寺は菅原道真と縁の深い寺なのです。
このように、江戸時代の料理書を本に、実に手間のかかる方法で再現を試みました。
そして、製品化にあたり、できる限り江戸時代の料理書に基づき、配合の増減と一部の製造過程、使用機器は、完成品に影響を及ぼさない範囲で最低限の変更を加え『柚雲』が生まれました。
こだわりは江戸時代の料理書のみではありません。
原材料も出来る限り石川県内のものをと考えています。
柚子は金沢ゆずです。
金沢市内(湯涌から浅川地区周辺)で収穫された一級品のみを厳選して用いています。
一万個から二千個を選りすぐりました。
胡桃は白山くるみ、醤油は加賀産丸大豆使用・国産原料百%の大野しょうゆです。
道明寺粉は加賀の餅米を金沢市内の製粉所で製造しました。
「柚雲」の特徴
見た目とは異なる、新鮮な風味、果肉がたくさん入っていることが味のポイントです。
現代の丸柚餅子とは異なり、道明寺粉の食感や果肉の酸味が楽しめます。
切ると、柚子の香りが広がり、口に運ぶとそのフルーティであることに驚かれることでしょう。
保存食として作られているのに生菓子に近いみずみずしさが特徴です。
文:陶智子
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